夜に突然、停電して真っ暗になったら動きが止まり固まってしまうはず。目が不自由になったら、白杖を使って外に出る勇気があるだろうか。
20代で「網膜色素変性症」と診断され50歳で視力をほぼ失った川口市在住の高瀬喜代美さんは、書道家として活動しながら、低視覚障害を支援する団体「ロービジョンラボ」の川口支部長として講演活動も行っている。
書道は子どもの頃から好きで、教室に通い、結婚する20歳まで習って筆をおいた。20代で症状が出はじめてからの30年間は毎日、不安で辛かった。
しかしふと、子どもの頃から好きな書道で、暗闇から抜け出す。外に出る気も起きない中で、突然「筆を持ちたい」と思った。
30年間のブランクがあっても、紙と向き合って一気に書いた文字は、自分でも驚くほど前向きな文字や文章ばかりだった。
外へ出てチャレンジしよう、自分を助けてくれた書道を通して「見えなくなって初めて見えてくるものがある」ことを伝えたいと思う瞬間だった。
視覚を失うと、嗅覚や聴覚が敏感になって、草花の香りなどで四季を感じ、言葉のトーンで相手の性格や感情の起伏なども分かるようになった。
子どもたちへの講演活動では、書道は文字の配置や形の全体のバランスが大事で、生活でも同じように周囲や全体のことを考える勉強だと話している。
大人への講演では、障害者が外に出て活動しようと思うまでの苦しさを知ってほしいことや「失って初めて分る 当たり前のありがたさ」などを話している。
現在の視力は左目が0で、右目は0・001と、ほんのわずかな光を感じる程度。4月中には、岩槻区東町のカフェ・タマコチの店内で個展形式の作品展示をしている。
展示された作品は、会場の雰囲気や見に来てくれそうな方々を考えてから制作するとのことだ。会場ごとに変わる作品展示も楽しみのひとつである。
【編集部・奥山】
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