前回も、骨折について取り上げました。同じ骨折でも、部位によって出てくる障害は大きく異なります。今回は、脊椎を骨折した場合について考えていただこうと思います。脊椎は、俗に言う背骨です。アジの干物を食べたときに、頭からしっぽまで細かい骨がつながったアジの背骨を見たことがあると思います。大きさこそ違いますが、ヒトの背骨も構造的には同じです。アジの背骨を一つひとつ引き離すと、白い紐のようなやわらかいものが現れます。これが脊髄です。脊髄は、脳から出ている神経の束です。ちなみに、脳と脊髄を合わせて中枢神経と言います。魚だと尾ヒレですが、ヒトであれば手足を動かしたり、外界から得られる刺激を脳に伝える伝導路です。このように、脊椎にはとても大切な中枢神経が通っているので、背骨が折れる(複数ある脊椎が外れてずれたり、その一つが折れて欠けるなど)と、その中を通るやわらかい脊髄が傷付くリスクがひじょうに高いのです。特に、ろっ骨や筋肉によって守られていない首の部分は、外力に弱く、折れやすい…。乗車中に追突されて、むち打ちで長いこと苦しむ人が絶えないのは、首が無防備な構造だからです。脊髄が損傷したとき、今の医学では中枢神経は再生しないとされているので、損傷した神経自体は回復しません。生き残った神経がネットワークを新たに構築していくという形での機能回復は、早期に適切な刺激を加えて行けばありうるとされていますが、障害が残る可能性はあります。数ミリの差で大きく異なりますが、次回また取り上げたいと思います。【愛風・久毛】
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