現在、74歳の私が人生で最も影響を受けた本は何か。
1冊あげなさいと言われたら真っ先に挙げるのが、時実利彦先生(大脳生理学者)の『人間であること』です。
脳の話も影響を受けました。
2冊とも岩波新書で、その2冊が私にとっては、バイブルみたいなものです。
高校時代に読んだ本が今の私を支えてくれています。
今ではボロボロになった本を時々ですが開きます。
すると新たな発見があります。
何十年経っても先生はこんなこと言いたかったんだろうな。
時代が変わったけれども、基本はこれだと気付かされます。
そういう意味で自身が影響を受けた本を手元に置くことは、心の安らぎにも拠り所にもなります。
時実先生は著書の中でこんなこと言われています。
『植物は生きている』『動物は生きていく』『よりよく生きるのが人間である』。
ただ生きているのであれば植物だよ。
ただ生きていくのは動物だよ。
よりよく生きる存在こそが人間である。
高校生の私にとって『よりよく生きる』とは何かが永遠のテーマになりました。
大学で心理学を学んだのもそれがきっかけです。
大学紛争の真っ只中です。
否が応でも『人間がより良く生きるとは何か』を考えさせられました。
今思えば、50年以上に渡って、このテーマでやってきたことになります。
自分が障害者の方たちに関わるようになって半世紀。
現在も『こころの相談室』で無料の心理相談を続けていますが、その根底にあるのは、やはり『人間、よりよく生きるとは何か』です。
一人ひとりの子供が、今目の前にいるお子さんが、よりよく生きるためには何が必要か。
社会人になり、数十年ほど経って辿り着いた答えが、『母親を楽にさせる』でした。
母親が楽になれば、子供も楽になれる。
当たり前に思えますが、これが難しい。日々の生活の中で母親が楽になれる事はないか。
ほっとできる時間は作れないか。
一緒に探すのが、私の相談のスタイルになりました。
難しいことは言いません。
それはいけない。
こうやったほうが良い。
こうあるべきだ。
そんなことは言いません。
甘えではありません。
子供のためにも自分自身が少しでも楽になることが、『人としてより良く生きる権利』だからです。
世の中には、そこらかしこの資料を集めて誠しやかに蘊蓄を述べる方がいます。
そういう方に限って『あるべき論』なのです。
あるべき論に惑わされないでください。
【NPO親子ふれあい教育研究所代表(元大学教授)藤野信行】
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