日常生活で私たちは、さまざまな問題と向き合っています。夕飯の献立や髪型などの個人的な問題から、働いていても生活費が足りないなど、社会的な問題として対応を迫れる場面もいくつもあります。一方で、個人レベルの問題が、社会的な問題を浮き彫りにするきっかけになる場合もあります。例えば、かけ算をなかなか覚えられない子がいて「家庭での教育不足だ」といわれれば個人的な問題と思われがちですが、学力テストで多くの子どもたちにも同じ傾向がみられた場合には、社会全体で解決するべき問題とされるケースもあります。では、どのように問題を解決するべきか。前回は「問題発見」をテーマに考え方を紹介していきましたが、今回はそれを受けての「政策設計」について伝えていきます。
◎政策設計の考え方〈1〉社会の将来予測 社会にとっての「望ましくない状態」が政策上の問題として認識されると、行政の担当各所によって政策案が設計されます。そこでまず行われるのは社会状況の分析で、次に、社会の将来予測が行われます。将来予測には専門的な知識が不可欠となるため、ここでは基本的な3つの考え方をおさえておきます。①投影的予測(トレンド予測) 例えば、商店の今までの売上データを基にして、曜日ごと季節ごとで販売量を予測して発注数を決めることです。このように過去の傾向が同様に今後も続くとして考えて予測します。②理論的予測 例えば、ごみの排出量についての予測です。「人口」「世帯数」「収集頻度」「分別数」などが原因(X)となり、結果(Y)に影響を及ぼすというY=f(X)の理論的な関係を見出す。このように、Xに特定の数値を入れることでYを予測します。③類推的予測 分析者の主観的判断に基づいた予測です。例えば、環境保護対策を考えるには、将来の技術進歩による新たな環境負荷低減技術も考慮しなくてはなりません。もちろん、将来のデータはありませんので、専門家の見解を基に類推的予測がなされます。
〈2〉問題解決の手法 社会の将来予測がされた後には、「望むべき社会を到達目標として設定します。公共政策の手法は多様ですが、「目的を達成するために政府(行政)がコントロールする活動として捉えた場合に3つの区分で分けられます。①直接供給・直接規制 警察サービスなどの市場が存在しない(=民間企業では供給できない)、「公共財」が直接供給に該当します。また、道路の速度制限は直接規制に該当します。②誘引 政府(行政)が直接介入をすることなく、目的達成のための仕組みつくりのみおこなうことです。例えば、環境配慮をおこなう企業に補助金として金銭的な支援をする場合や環境汚染に対して課税をする場合があります。こうして、特定の行為をおこなうように間接的な誘因を与えます。また、特定行為の税制上の優遇もこれに該当します。③情報提供 例えば、男女共同参画の啓発です。男尊女卑の強い地域であれば、まず意識を変える必要があります。住民に対して、講演会や広報パンフレットなどを用いて情報提供することで行動の変化を期待します。これは、他の政策手段に比べて地道で長期的な活動にはなりますが、人権保護やLGBTなどの意識変化が必要な場面で多用されています。岩槻区の場合では、地下鉄7号線延伸の情報提供が行政によって継続的にされています。
以上のように、今回は社会的な問題の解決に向けた「政策設計を考えてみました。次回は、こうした政策設計の手法をどのようなプロセスで決定をして、実施されるのか考えていきたいと思います。【さいたま市若者会議 代表・尾舘祐平】
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