前号で取り上げたアメリカ留学の関係で、私の大学山岳部生活は、4年を通り越し、5年目に差し掛かった。正確には、5年時は半年で卒業ができたので、残り半年は丸々自由だったわけだ。
そんな中、ネパール政府が出していたヒマラヤ未踏峰リストから、緯度と経度だけを頼りにGoogle Earthで探し当てたのが、ネパールの未踏峰、「ラジョダダ」だった。
人類未踏というだけあって、3年生で登頂したアイランドピークと180度違い、アプローチから登はんまですべてが未知で、出発前から毎日がワクワクであった。
山が村の奥地にあるという理由から、ネット上では本当に小さな、不確かな写真しか確認することができなかった。
いざ出発し、ファンタジーの世界のような秘境の村に滞在し、ゆっくりと駒を進めていった。
最後のバス停から歩くこと、およそ100kmだ。1週間かけて、体調を崩さぬように歩いていった。
やっとのことで、登山体制に入り、人類が歩いた事のない氷河や崩れそうなクレバス(氷河上にある雪と雪の割れ目。
深さはそれぞれだが、時に50m以上にもなる)帯を攻略していった。
約2週間の高所順応や偵察の末、登頂日はノンストップで26時間行動し、ギリギリで山頂を踏み、クタクタでテントに戻った。あの感動は一生忘れないだろう。
有名で人気な山でもなく、情報がない未知の山で必死に突破口を見出す、これこそが自分にとって最高に楽しい登山の形なのだと実感した。
人生で初めて、未踏の山に登頂し、「大学山岳部から始めた自分でもできるんだ!」と、大きな手応えを得て、私はネパールを後にし、冒険は今まで続いている。
この原稿を書き終えた翌日(5月26日)は、次の目的地であるペルーアンデス・6000mの未踏の壁への旅が始まるのだ。
【クライマー・鈴木雄大】
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