「20XX年。貿易自由化と少子高齢化で、日本の農業は壊滅状態に。食料自給率は一割を切り、ほとんどの食料を輸入に頼る事態に陥る。そこに某国で戦争が勃発して食料輸入が停止。さらに異常気象が重なり、世界中で巨大台風や洪水、干ばつがおこり、『世界同時食糧危機』が到来。
日本政府は備蓄米を放出するが、焼け石に水。日本中のスーパーから食料品が消える。政府は『配給制度』の復活に踏み切るが、闇取引が横行。自給できる農村地帯を除き、日本中が飢餓の恐怖に見舞われる。」
これを近未来の絵空事だと笑っていられるでしょうか?
米国ラトガース大学の研究者らは、「局地的な核戦争が勃発した場合、直接的な被ばくによる死者は2700万人だが、『核の冬』による食料生産の減少と物流停止による2年後の餓死者は、食料自給率の低い日本に集中し、世界全体で2・55億人の餓死者のうち、約三割の7200万人(日本の人口の六割)が日本の餓死者」と発表しました。
日本の食料自給率は37%と言われていますが、肥料や種の多くを海外から輸入しているので、真の自給率はすでに1割に届かないという試算もあります。核戦争は起きないにしても、ウクライナ戦争が長期化したり、世界的な不作や感染症の蔓延による輸出停止や規制が広がれば、日本が世界で最も飢餓に陥りやすいという可能性があるのは間違いないようです。
ただでさえ地震などの自然災害が多い日本ですから、南海トラフ地震が起きて日本の太平洋側の港湾施設が大きく破壊されただけでも、海外から食料が十分に輸入できないという事態は起こりえます。
6月25日の毎日新聞では、「食料危機に陥った場合、花の生産者らに穀物やイモの生産を命じたり、買い占めを防いだりする仕組みを整備する。」とし、岸田首相が関連法の見直しを指示したと報じました。どうやら農水省では、「有事の際には、日本中にイモを植えて、三食それでしのぐ」とまるで戦時中の再来のようなことを本気で考えているようです。
もと農水省の官僚だったこの本の著者は、「不足の事態に国民の命を守ることが国防とすれば、国内の食糧農業を守ることこそが防衛の要、それこそが安全保障だ。国民一人一人が、自身がリーダーの覚悟で、それぞれの立場からやれることに取り組み、子どもたちの未来につなげたい。」と語っています。
【さいたま市防災アドバイザー 加倉井誠】
『世界で最初に飢えるのは日本食の安全保障をどう守るか』(鈴木宣弘/講談社)
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