今年、平成30年2月に開催された「第6回 人形の里区民総合芸術祭」に出展された数々の作品のうち、どうしても気になったものがあった。今回は、その作品の制作者である鈴木惟司さん(岩槻区浮谷・73歳)にお話を伺ってきた。鈴木さんは、同祭の一般公募作品に出展。樹齢400年を越える欅材に500文字を超える般若心経の小さな文字や動物を彫り込んだ木工の作品を手がけた。鈴木さんの出身地は、東日本大震災で大きな被害を出した宮城県石巻市である。21歳で上京し建具職人として腕を磨き、7年後に結婚を機に独立し岩槻でお店を構えた。実家は多くの子供が犠牲になった大川小学校の近くで、津波で兄弟や親族や知り合いの方も多く亡くなったという。趣味の木工を始めたきっかけは、還暦を過ぎたころ近くの製材所を訪ねた時に見つけた欅の老木との出会いだったと話す。樹齢400年を超えると思われる欅材の端材が地面に転がって腐りはじめていたが、その材木達の表情や姿に惹かれ譲ってもらって帰り、それまで歳を重ねるごとに何となく気になっていたお経の文字を刻むことに挑戦した。しかし、何といっても堅いのが特徴の欅材で、さらにコブや節がある部分に小さな文字を刻むのは長年磨いた建具職人の腕を持ってしても大変な作業で何度も失敗しては削り直し、又最初から文字の刻み作業で完成させた長い年月を労した作品だったという。この作品の制作中に起きた東日本大震災の後からは、多くの犠牲者の鎮魂の願いを一つひとつ刻む文字の中に入れるように努めたと語る。このようにして作成された作品は、寄贈や震災後の故郷で見てもらう事で、鈴木さんの故郷石巻の津波で亡くなった多くの方々の鎮魂になっていると思われる。【編集部・奥山】
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