企画展「縄文時代のさいたま」から「漆製品」

岩槻郷土資料館では、令和六年一月二一日(火)まで、「さいたま市史 通史編 原始・古代Ⅰ」に掲載されている縄文時代の資料を中心に「縄文時代のさいたま」の展示を行っています。
今回は、この企画展の展示資料の中から「漆製品」について紹介します。

掻き傷をもつウルシの木

現在行われている岩槻区真福寺貝塚の低湿地部分の調査から、漆を塗った土器や漆器の破片がみつかっています。
こうした漆の利用が日本で始まったのは、今から約九〇〇〇年前とも約七二〇〇年前ともいわれています。
またウルシの木の原産は中国ですが、福井県鳥浜貝塚からは一二六〇〇年前のウルシの木がみつかっており、日本におけるウルシの起源に大きな問題を投げかけています。

今回の展示の中には中央区南鴻沼遺跡からみつかったウルシの木・漆製品・関連する資料があります。
ウルシの木は径三㎝、長さ一一三㎝程のものですが、一〇㎝程の間隔で、漆を掻いた傷が残っていました。
年代を測定したところ約四八〇〇年前という結果が得られ、現在のところ日本で最も古い掻き傷をもったウルシの木ということがわかりました。

こうして掻き取られた漆は塗料、塑形剤、接着剤などに使われたようです。
展示資料のうち、櫛は櫛歯を紐で固定した後、砂や粘土を混ぜた漆を塗り、形作っています。
石鏃は矢柄に固定する際の接着剤として漆が使用されています。
同様な石鏃がもう一点ありましたが、矢柄の装着されたままの石鏃は大変珍しいものといえます。
漆器に塗られた漆は何層にもわたって、塗られていることがわかりました。
漆を入れていたと思われる注口土器は、内面だけでなく、注口部分にも漆の塗膜がみられ、注口部分から漆を注いでいたことなどが考えられるものです。
この他、展示はしていませんが、漆に顔料を加える際に使われた土器などもみつかっており、漆の採集から利用していくまでの工程を示すような資料がみられています。

今回の展示から縄文人たちが示した高い漆技術や漆工芸に関する資料をご覧いただければと思います。

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