河井酔茗による『ゆずりは』を読み終えた私の元へ、学級委員の2人が来てこう言った。「先生、私たちからの 『最後の授業』があります。音楽室へ移動してください」いつのまにか教室には、学級委員の2人と私の3人だけで、他の子どもたちはいなくなっていた。学級委員の2人に導かれて、私は音楽室へ向かった子どもたちは、拍手と笑顔で私を迎えてくれた。とまどう私の頭の中では「……?」という疑問符が浮かんでいた。とまどう私を目の前にして、女子生徒の弾くピアノの音が美しく流れ、クラスの生徒たちが全員で静かに歌いはじめた。
この広い野原いっぱい咲く花をひとつ残らず先生にあげる赤いリボンの花束にして……
全員が1本ずつ花を持ち、歌いながら順に私に渡してくれた。最後には赤いリボンで、大きな一つの花束にしてくれた。そのあとも「だから私に手紙を書いて」という声が、一段と大きくなっていった。私も大きな声で「手紙を書いて」と続けた。胸いっぱいとなった私が、心に40数本からなる大きな花束を抱えたまま子どもたちからの「最後の授業」は終わった。四十数年経った今も、熱い思いが身体中に流れる「最後の授業」であったと思う。【谷倫】
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