戦後、物質文明は進化したが、精神文明は退化した事は明らかです。
有名なフランスの思想家ブレーズ・パスカル(一六二三年〜一六六二年)は「人間は考える葦である」と云う有名な言葉を残しています。
ところが、戦後はマニュアル本が溢れ、人々は考えることを止めてしまったのです。
最近ではスマートホンがその傾向に拍車をかけました。
音声で問いかけると回答が直に返って来るので、もうマニュアル本さえ読まなくなりました。
本を読む、考えると云うプロセスは失われました。
ここに、如何に精神文明が退化したか、の好い例を新人物往来社発行の「懐かしい昭和のニュース手帖」から引用させて頂くと、住むところもなく、あたり一面が焼け野原になり喰べる事にさえ汲々とした敗戦翌年の昭和二十一年(一九四六年)、人々が闇市に集り飢えをしのいでいた年のベスト セラーになった本の題名を見て眼を見張りまし た。
「旋風二十年」森正蔵、「哲学ノート」三木清、「嘔吐」サルトルと云う本が読まれていました。
ところがそれから十年後の昭和三十一 (一九五六年)のベストセラーには「四十八才の抵抗」石川達三、「太陽の季節」石原慎太郎、「異性ノイローゼ」加藤正明が入っています。
このギャップはどう云うことでしょうか。 (つづく)
【加藤 三郎】
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