次の一手を打たなければと犬を里子に登録し、里親を募集したらなんとたった数日で引き取りたいという人が現れるのだから、最初からこうすればよかった、と私は思った。妹は両手を合わせて謝り、言い出した自分がビラを作るくらいしか役になってなかったことを気にしていた。「まぁ、でも見つかったし」と落ち込む妹を励まし、「これですべて解決したね」と泣き崩れそうな雰囲気の母親に悪いな、と思いながら、私は胸をなでおろしていた。犬を見送るのは思ったより私の中でさっぱりしていて、巣立つ鳥を見送る母鳥のような心境だった。達者でな、と言いたくなる。しかし、その里親から母親に電話があったのはその2日後で、どうにも相性が悪く、言い聞かせたことを全く聞かず、しまいには手を噛んでしまったのが決定的で、私が数日後に実家に行くと何事もなかったかのように犬がいた。「え、なんで?」「どういうこと?」と混乱して自分だけが数週間ほど戻ってしまったのかとカレンダーの日付けを何度も確認する私に母親が嬉々として「うちで預かるわ、この子」と、言った。「あ、そういうこと」と安心して私が経緯を聞くとそういうことで、私の達成感は2日しかもたなかったのかと、気を落としながら、でも幸せそうな母親と犬を見て、この絆を生んだのもまた、探し回った二週間だったのだと思い、「いい家が見つかってよかったな」と犬の頭をなでた。【大野弘紀】
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