「詩人なんですか?」楽器と僕と本の三点を交互に見比べる。「そうなんです、意外にも、僕は詩人なんです」と言う。自分を紹介するのが、なんだかいつも気恥ずかしくて、いつも、慣れない。「じゃあこれを」とタイトルに惹かれたようで、余韻という詩集を読み続ける人の隣で僕はひたすら演奏する。周りの音が消えていくような気がして、時間が引き伸ばされているのか、自分が時間の海に佇んでいるような感覚が、いつもなんとも言えなくて、この漂流にも似た感覚が、いつも好きだ。「あの」遠慮がちに話したと思ったら、本を閉じて、その人が言う。「なんか、この本読んで、すごい刺さりました。生きていこうって、思いました。「ありがとうございます」と本を受け取る。「実は」とその人は言った。「実は、死のうと思ってたんです…そしたら、なんかよくわからない音が聞こえて」と笑った。「なんか、吸い寄せられちゃいました」「吸い寄せちゃいましたか」となんと返していいのか戸惑いながら、言った。「でもなんか、不思議ですね」と互いに言い合う。その人は「死のうと思って自転車をずっと漕いで大宮まで来たんですけど、自転車取られちゃって」しまったらしい。人生ってなんでしょうね、みたいな話を、まるで夕焼けを見ながら語り会う学校終りの同級生のような気軽さでしみじみと話しながら、「どうして詩を書いてるんですか?」とその人は尋ねた。
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