在宅を支えている利用者さんの状態はさまざまです。

愛風も在宅を支えてはや20年です。
その経験の中で思うことがあります。

人は食べなくなると死期が近いようです。
食べなくなる原因はいくつもあります。
舌や頬、咀嚼筋などの筋がうまく働かなくなって、嚙み砕くことや飲みこむ動作ができなくなってしまう。
認知症によって食欲を感じなくなってきたり、食べ物を認識できなくなって食事をしなくなってしまう。
熱中症で身体内の必要水分量が不足していると吐き気が出ますから、それで食べられないということもあります。

水分さえ充分にとれていれば、全く食べられなくても2~3か月はもつようです。
でも、その間に食欲が回復しなければ、もう命のろうそくは残りわずかだと思います。

 であるならば、食べられる間に、その人の希望をかなえてさしあげたい。
私はそう思います。
施設や病院に入ると、管理栄養士さんが、病気や心身状態に合わせた献立を考案して、嚥下機能に合わせた食事形態に加工して提供されます。
そうすると、むせが多い方などは、お粥で、おかずをミキサーにかけてドロドロにしたもの、見た目は何だかわからないものが提供されたりします。

 でも、経験上、おかゆが嫌いという高齢者は少なくないです。
戦争中にお粥をすすった経験から、おかゆはきらいだとおっしゃっていた方もいました。
むせても、かめなくても、ご飯が食べたい!
 そういう願いを叶えて上げられるのは在宅で処遇する訪問介護だけでしょう。
看護や医師は、むせが強く、誤嚥性の肺炎を繰り返しているような人には、口からの食事を禁ずる指示を出しがちです。

 でも、故日野原重明医師は、ご自身が終末期を迎えた際におっしゃっていました。
「医師として、自分が今、食べられないということは分かっている。
でも、カリッカリに焼いたベーコンが食べたい」。
もう、何日も口から食べ物を食べられていなかった日野原先生の、それこそ最後の願いでした。
でも叶わなかったようです。
先生を支える医療チームは、誤嚥して肺炎にでもなり、先生の寿命を縮めることは避けたかったのでしょう。

 介護は、その人の生活を支える仕事です。
医療とは違う角度から、食事を考えます。
栄養補給だけでなく、その人の想い出や、希望、そんなものにつながる食べ物があるならば、なんとか食べてもらえるように工夫したいですね。
食べている間は、生きているわけですから、よりよく生きられるよう、介護していきます。
皆様は、最後、何を食べたいですか?

【愛風・久毛】

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