政策の設計〜実施の先で 4種の評価方法を知る

前回までのおさらいとして、これまで政策問題をどのように捉えて、どのような政策設計の手法を用いたらよいかと、事例を挙げながら考えました。
さらにその後、その政策をどのように決定していくのかといった過程を考えました。
そして今回は、決定された政策が実施されてどのように評価されていくのかを考えてみましょう。
例えば、国の場合には、法律の制定をおこなうことで政策の大まかな規定をおこないますが、実施現場で起こる全ての状況を法律に規定することは不可能です。
また、すべてを規定してしまうと、社会経済環境の変化に対応することができず、都度改正をしなければならなくなってしまいます。
そのため、具体的な内容は、政令、省令、通達・通知などで示すこととなっています。
こうして、政策実施まで行ったあと、政策がもたらした効果が当初想定したものになっていたか、政策が適切であったかを評価します。
様々な観点からの評価がありますが、4つの手法をご紹介したいと思います。

◎セオリー評価
これは、政策のロジック(論理)が適切であったかを評価します。
例えば、企業誘致をおこなう目的を掲げているのに、土地利用の制限をおこなってしまうと企業はそこに立地をすることはないでしょう。
このように、ロジックとして、①投入②活動③産出④成果が適切につながっているのかが評価の基準になります。
交通渋滞政策を例にそれぞれの意味を確認します。
①投入は、政策実施をするためにどのくらい人員や資金を当てたのかということです。
②活動は、行政がおこなった行為の内容です。
道路の拡幅や工事といった実際の活動です。
③産出は、活動をしたことで得られたサービスの分量です。
例えば、活動によって車線数が増えたといったことです。
④成果は、産出によって社会にもたらされた結果のことです。
ただ、すぐに成果として現れるものと一定期間経たないと現れないものがあるため、段階を追って評価をする必要があります。
◎プロセス評価
セオリー評価で政策問題解決のロジックが検討されたあと、その政策が適切に実施されていたかを検討します。
これがプロセス評価です。
もし仮に、道路の工事のスケジュールが遅れた場合、渋滞解消までの期間が遠のくことになります。
そのため、プロセス評価では、政策のモニタリング(監督)をすることで、実施状況を検討して評価します。
◎業績測定
これは、目標数値に達しているかどうかということを前述した産出と成果から測定することで評価します。
例えば、1時間当たりの交通量を60台から100台に増やすと目標数値を立てていて、達成できたかということです。ただ、目標数値が何の基準をもって「望ましい」と設定されたのかが不明瞭のため、ベンチマークとして、他自治体と比較して設定されることもあります。
◎インパクト評価
政策の実施によって社会にもたらされた効果や改善の度合いで評価をおこないます。
つまり、「政策を実施しなかった集団」と「政策を実施した集団」でどれくらいの効果の差があったかということを検討します。
しかし、一つとして同じ自治体はないため、厳密に政策を実施していた場合としていなかった場合の比較はできません。
国も同様です。最近おこなわれたGOTOトラベルも実施していなかった場合の経済効果は厳密には分かりません。

以上のように、政策を実施したら評価を適切におこなうことが大切です。
そうすることで、次の政策設計の精度を高めることができます。
何事も振り返りが重要だということです。
6月号からスタートした「公共政策についてのコラム」は今回でひと段落となります。
来月号の内容は、考え中です。乞うご期待を。
【尾舘祐平】

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