市議会議員の活動の1つに「一般質問」と呼ばれるものがあります。これは、市議会議員が執行機関である行政のおこなうほとんどあらゆる活動について公式見解を求める行為です。それと同義である「代表質問」では会派で代表した議員が質問することです。ただ、この「一般質問」には議員個人の問題意識による争点提起がされることになるため議員の技量が大きく左右されます。加えて、傍聴する市民や行政職員、同僚議員に待ち時間の限り発信ができる唯一の時間であり、政治家としてのアピールができる場でもあります。よって、議員のなかには「一般質問」が一番華やかな時間と感じる人もいます。こうした「一般質問」の機会を通じて議員は、①監視機能と②政策提案機能を果たすことが必要となります。①監視機能は、行政運営の在り方をチェックすることです。②政策提言機能は、新規事業の提案や現行事業の改善、廃止など自由に意見を述べて執行機関の見解を求めることです。
ただ、誤解されないように明言しておくと地方自治法には、「一般質問」にかける労力は一円たりとも入っていません。そのため、「一般質問」をおこなわない議員がいても問題ありません。また、たとえ「一般質問」をおこなっていても現実には「もったいない質問」や「残念な質問」もあるようです。では、どんな質問が「もったいない質問」や「残念な質問」になってしまうのでしょうか。いくつかご紹介していきます。①論点を盛り込みすぎた質問政策課題には、1つの分野にとどまらず、経済・雇用・福祉・教育など幅広く複雑に絡む事柄も多いです。しかし、論点を盛り込みすぎると、結局何が言いたいのか分からなくなってしまい、本当に知りたい情報が引き出せません。そのため、論点を絞り質問を鋭くすることが重要です。
②前置きが長い質問聞く側にとって、いつ質問が始まるのだろうと思えるような質問です。また、本題とは関係が薄い前置きをしてしまってはせっかくの質問時間がもったいないです。特に、自身の政治信条を話すことに時間を割いてしまい、執行部から「勉強になりました。参考にいたします」と受け流されるだけの演説家になるのは避けたいです。
③確認するだけで終わってしまう質問「○○はどういうことですか」「△△ということです」「ありがとうございます」と次への発展がない質問です。なかでも、公表されている数字や情報を聞くだけに終始してしまっては最悪です。もちろん、質問した議員にとっては意図があるのかもしれませんが、質問の中できちんと問題意識や争点などを伝えなければ執行部が気づくこともできません。また、「しっかりやっていますか」という言葉で締めくくる質問をしてしまうと、「しっかりやっています」という答弁になってしまい、指標や目標となる水準がなく曖昧なやり取りになってしまいます。
では、良い質問にするにはどうしたら良いのか。先程挙げたことに注意を払うことはもちろんのこと質問の「内容」と「構成」を磨くことが大切です。「内容」には、「①事実」「②分析」「③主張」の3要素が必要です。どれか1つ欠けても「内容」の説得力が弱くなります。例文に照らして見てみると分かりやすいため、「②分析」を抜いて質問を作ってみました。
《例文1》「A施設の維持費が2億円かかっていますが、1億円に削減すべきではないでしょうか」。
いかがでしょうか。「その根拠は?」と突っ込みたくなりませんか。3要素全てを加えて質問をすると次の通りになります。
《例文2》「A施設の維持費が2億円かかっていますが、他市では同じ規模を1億円で維持できています。そのため、1億円に削減できるのではないでしょうか」。
このように「①事実」で誰しもが同じ解釈となる事柄を述べて、「②分析」が合理的なものになれば、「③主張」を支えることなり説得力が強くなります。しかし、条件や背景知識の理解が低くなり「②分析」の質が低くなると《例文2》に対しても「本市と比較して、他市では利用者数が半分なっています。そのため、同じ規模でも人件費が抑えられて、1億円で維持ができています」といったような答弁で受け流されることになりかねないので、「②分析」の質を高めることが重要です。次に「構成」です。これは、議員それぞれスタイルや戦略があるため、一概に言及できませんが、結論サンドイッチで構成することで職員や市民に伝わりやすい質問になります。結論サンドイッチとは、結論‐詳述‐結論と冒頭の耳を傾けている人が多い段階で結論を述べて、最後に改めて論点がブレないように結論で締めくくることです。こうすることで正しく質問が伝わり必要な情報を引き出すことができます。以上のように、「内容」と「構成」を工夫することで質問の質が高まり、良い質問になることが理解できたと思います。次号掲載予定の第二部では、現職の市議会議員の議事録からどのように「一般質問」がされているのか見てみたいと思います。【尾舘祐平】
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