今回紹介する「岩槻古城八景和歌集」は、「岩槻古城八景」の制作の経緯と、「岩槻古城八景」に関する和歌が収録されているものです。
「岩槻古城八景」は、明治一八年(一八八五)、旧岩槻藩士らによって、明治維新後、廃城となった岩槻城の姿を中国の「瀟湘(しょうしょう)八景」をもとにして描かれた「近江八景」になぞらえ、城内の景勝地の八景を描いています。
「岩槻古城八景和歌集」では、この「岩槻古城八景」にある八つの風景の他に、「道灌箸立の二本杉」を加えた九つの風景を糸丸、本也、児笑、陰行など一六人が詠み、全部で一六〇首が見られます。これらの和歌を詠んだ人物はいずれも号で表されているため、本名がわかるのは数人しかいません。
明治一八年(一八八五)四月、平野糸丸がはしがきを書いていますが、翌一九年(一八八六)二月に春陽亭若芝による署名が見られることから、この明治一九年二月に歌集は完成したものと考えられています。はしがきには岩槻古城八景の画は、「駑楽」に頼んだとあります。しかし、「岩槻古城八景」を紹介した時にも記したように落款から画の作者は「北淵」と思われます。ただし「駑楽」との関連については不明です。
「岩槻古城八景歌集」が収録されている「岩槻和歌集」は、「大正壬戌年卯月」(大正一一年―一九二二年四月)に川崎清風によって、編纂されたものです。岩槻に住んだ人物が詠んだものや岩槻に関連のあるものなどが収録されています。
この歌集の表紙に使われている「振黄金砂子」紙は、元岩槻城三の丸御殿にあった唐紙に使用するもので、市宿の大経師堀江正之助氏が寄贈してくれたものと序文に見られます。
なお、一〇月二一日までの期間、新たに寄贈された「岩槻古城八景」とともにこの和歌集も郷土資料館で展示しています。
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