
堀川惠子著「透析を止めた日」講談社刊
2011年3月11日、東北地方が大きな地震に見舞われたとき、宮城県内ではすべての血液透析の施設が停電し、断水が9割にも上った。
県北の気仙沼地区では透析を受けられない患者が160人も発生。
彼らは二晩、小雪の舞う激しい寒さを耐え、さらにバスで一晩かけて仙台市の東北大学病院に運ばれてきた。
医局ではトリアージを行い、緊急性の高い79人を選抜し透析を実施。仙台市内全域で断水と停電は続いていたが、東北大学病院では地下水を使うシステムを持ち、非常電源も生きていたため緊急対応が可能だった。
応急処置を終えた患者たちはバスで航空自衛隊松島基地へ移送。
自衛隊機で受け入れが確認できた北海道の病院に搬送された。
その後も沿岸部から患者は続々と押し掛けてきたが、普段自分がどんな薬を飲んでいたかもわからない人が多く、危機的な医療現場をより混乱させたという。
慢性腎臓病は、日本人の5~8人に1人が罹患する国民病で、進行すると腎不全となる。
治療法としての血液透析は、1945年にウィレム・コルフが戦時中の兵士のクラッシュ・シンドロームによる急性腎不全を救命するために開発したという。
本書の前半では、著者が腎不全患者であった夫と共にすごした壮絶な闘病の様子が描かれている。
「腎不全患者の終末期医療」の問題、入院していた有名病院の主治医が患者の訴えに耳を貸さない様子など、実体験を赤裸々に記している本書はベストセラーとなっている。
死と無縁の人はいない。
「尊厳に満ちた生と死を享受することのできる医療の実現」に向けて我々は何ができるのか、ぜひこの本を読んで考えていただきたいと思う。
【さいたま市防災アドバイザー 加倉井誠】
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価格:17380円 |
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