路上演奏での出会い〜その2〜 詩人・大野弘紀

「それ、なんていう楽器なんですか?」
 演奏していると色んな人から声をかけられる。
「ハンドパン、て言うんです」と僕は説明する。
 たいていの人は未知の言葉に遭遇して戸惑う。
フライパンなら聞いたことがあるんだけど、て言う人もいる。
手でたたく、スチールだから、ハンド、パン。
この説明であっているのかわからないけれど、曖昧に説明をする。
「指で、こうやって弾くと」やってみせて、ぽん、と音が鳴って「こんなふうに音が出て」次々と叩いてぽんぽん音が鳴って「こんな感じで音が出るんです」と説明すると「へぇ~」「珍しい楽器だね」と感嘆して、ある人は叩いてみて「あ、これ難しい」て言ったり、「ありがとね」なんて言って、また雑踏の中に紛れていく。その一瞬の驚きや喜びが、なんとなく、嬉しい。
そして今日も、いつものように、声をかける人がいた。
「それ、なんていう楽器なんですか?」
 声をかけてきた男性は、名前を聞いて、驚いて、試しに触ってみて、感動して、「隣で聞いて行ってもいいですか?」と僕の隣に座る。
僕はふと思いついて、「せっかくなら、読んでいきますか?」と本を三冊差し出す。
「へぇ、詩集ですか」と興味を持って手に一冊取って、裏返した。
「それ、僕が書いたんですけど、もしよかったら、どうですか?」ともう一度言う。
「え、」とその人は驚いて、間が空いた。
「僕は、演奏家じゃなくて、実は詩人なんです」
〜次回・その3に続く〜

ハンドパン

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