犬がいる。首輪がなく、リードもない、この子はなに、迷子?と思ったら、信号を待っているかのように、佇んでいた。先に見つけたのは妹で、「犬がいるよ!」と駆け出すように近づいていく。私が追いつく時には妹は「どうしたの? 行くとこないの?」となでなでと頭に手を置いていた。周りを見ても時々自動車が走るだけで「え、どうしようね」と言ってみたものの、答えてくれそうな人なんてどこにもいなかった。「お前帰る場所ないのか」そうか、そうか、と妹は抱えて「この子うちに連れて帰ろう」という勢いだったので、妹が暴走しないように私が冷静にならなければ、と「と、とりあえず」と、手のひらを向けて、言った。「警察に連れて行こう」誘拐になるかも、しれないし、とたどたどしく答えた。警察に届け出て、そこで問題になったのが、飼い主が見つかるまでどこで預かるか、ということだった。「うちで預かろう」と妹はきっぱりと言った。「居場所がないなんて、可哀そうだよ」なんて慈悲深いと、我が妹ながら感心していると、「あ、ダメだ!うち猫であふれてる」どうしょう、と泣きそうになっていた。「さっきまでの勢いは」呆れそうになっている私の隣で、「もしもし、お母さん?ちょっと相談があって」とすでに話を始めた妹に、さっきの感動返せ、て思って、無垢に私を見上げる犬に手を伸ばして「家族が見つかるといいね」としゃべりかけていた。〜次回・中編に続く〜【大野弘紀】
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