「先生、お久しぶりです。ぼく、小学6年のときに担任をしていただいたO・Tです。今、参議院議員◯◯の選挙運動で北海道にいます。全国区は◯◯をよろしくお願いいたします」ひときわ明るく歯切れよい会話に、にわかには信じがたく「えっ、O・Tくん? 立派になったのね」と答えてしまった。代議士秘書をしているという凛々しい声が、受話器を通して私の身体中に流れた。思い返せば、十数年前に小学6年生だったO・Tくんは、小柄で大人しく、足の速い子であった。ただ、一つだけ問題があった。なかなか登校しなかったのである。友だちがいなかったわけではない。いじめられていたわけでもなければ、学校が嫌いなわけでもなかったようだ。学校での彼は、教室で何かを手伝ったり校庭で遊びたわむれて、放課後に最後までいることも多かった。勉強は算数が得意で、成績は中の上だった。その後、クラスの生徒たちが彼の対策を考えだした。毎朝、二人の“仲間”が彼を迎えに行こうと提案してきたのである。その仲間の中の一人には、担任の私も含まれていた。先ずは子供たちだけでやる事にして、実際に始めてみると、楽しく登校する日もあったり上手くいかない日もあった。それを見た私は、子どもたちには「自然と思いやり、共通の課題意識、協力といった豊かな心が育っていたのだな」と思った。やがて、O・Tくんはクラスの仲間と一緒に無事に小学校からの卒業を迎えられた。振り返ると、子どもたちの日常の中にも、自分たちの問題を自分たちで考えて解決しようとする意気込みと時間的な余裕や、大人にも子供のやることを見守る心の余裕があったように思える。昭和時代のことである。
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