岩槻郷土資料館に平成三〇年八月に寄贈され、新しく「くらしの道具Ⅰ」展示室に展示された「上棟式矢」について、今回は紹介します。「矢」は二本あり、建物の棟木をあげる際の儀式である「上棟式」の際に使われたものです。御幣、扇子車、供物、儀式用の道具などと共に屋根の上に置かれ、棟木の両側の隅に飾られます。「鏑矢(かぶらや)」と「雁又(かりまた)」の二種類あり、「鏑矢」は、長さ一一一㎝、幅一一三㎝、矢羽根の部分を欠いています。「陽の矢」とも呼ばれ、上向きに飾られるようです。一方「雁又」は長さ一一三㎝、幅一一四㎝、矢羽根と軸の部分を欠いています。「陰の矢」と呼ばれ、下向きに飾られるようです。いずれも矢の面には、龍が描かれています。 江戸時代の浮世絵には、上棟式を終え、先頭が御幣をかつぎ、それに続いて、「鏑矢」、「雁又」をかついで引き上げていく大工の姿が描かれているものがみられます。今回展示した二本の矢は、大正一二年頃、岩槻区内に建てられた家の上棟式に用いられたものといわれています。矢の大きさが大きいことから大きな家の棟上げに用いられたものと思われます。この二点の他に幅六七㎝、長さ七六㎝の「雁又」があります。軸と矢羽根部分を欠き、対となる「鏑矢」はありませんが、こちらにも龍の絵が見られます。かつては、こうしたものを用いて、岩槻周辺でも、上棟式が行われたことが分かります。
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