岩槻区本丸に工房を持ち、人形づくりに励むかわにしすみえさん。公民館などでも生徒たちへ技術を教えているが、子どものころから人形作りが好きで、あり合わせの布で人形や衣装を作っていたという。しかし、かわにしさんの人生はけっして順風満帆ではなかった。20代の頃に、交通事故により脳に障害を負い、人生のどん底を味わった。そんな中、生きるためにと「自分のための人形作り」に没頭するようになり、人形教室に通っていたのだという。その後、図書館で天然素材による人形づくりの伝統技法を知り、岩槻の大切な文化が消滅の危機にあるのに気づいたことから、「誰かのための人形作り」をしたいという気持ちが募っていったそうだ。そしていつからか、かわにしさんは「自分の進む道は岩槻の伝統技法の継承にあるのではないか」と思うようになった。ただ、好きだとはいっても何も知らない素人が簡単にできる仕事ではない。そのため、かわにしさんは本を読みあさっては知識を深め、独学で伝統技法を追及。桐の粉を固める桐塑の型作りや貝の粉から作る胡粉の塗り作業などの関連技術を習得してきた。胡粉作業について監修と指導を受けられるようになってからは、疑問と不安が薄れていったが、かわにしさんは今でも「毎日が勉強」と語る現在、人形のまち・岩槻でも伝統技法の継承が課題になっている。素材の確保や手間ひまのかかる伝統技法の後継者育成など、抱える問題は尽きない。今では石膏やプラスチック製の作品が主流だが、伝統技法で作った作品を正当に評価してもらえないもどかしさや、個人のこのような気づと想いをどう伝えて行けばいいのか。かわにしさんは未だ試行錯誤を続けている。【編集部・奥山】
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