押しつぶされそうな不安感 恐れから来る「心気症」

 精神障害ばかり続き恐縮です。今回は「心気症」を紹介してみます。これは、少なくないです。診断されていなくても、みなさまの近辺にお一人くらいはいらっしゃるのではないでしょうか。

「重大な病気があるに違いない」と思い込んでいて、病院を転々とし、検査をするたびに、「どこも問題ありません」と健康の太鼓判を押されるのにも関わらず、先生が見落としているだけなのではないかとさらに不安を感じ、別の病院にかかる…。こういう人は心気症かもしれません。行くべきは、内科でも整形外科でも神経内科でもなく、精神科です。

 検査をして、何も問題ありませんよと医師に言われれば、安心するのが普通ですね? でも、この疾患をお持ちの方は、安心できない。結局、この医師は見落としているなどと思い込み、より専門的な先生に診てもらわなければならないと、半ば強迫的に、病院を渡り歩くようになります。

 日本は国家資格は一つですから、精神科以外の医師も学生時代に必ず精神医学も学んでいますから、知らないわけではありません。けれども、学生の知識レベルであり、「心気症」だろうなと思っても、それに対応した医療を実施してくれることはありません。むしろ、迷惑な患者だくらいに思われて、「大丈夫だって言っているでしょう? 信用できないなら他をあたってください!」なんて門前払いされてしまうことも…。

 ご家族がいくら「先生は大丈夫っておっしゃったでしょう? 心配いらないわよ。」となだめても、聞き入れることはありません。根底に強い不安があり、その根幹に対応しない限り、この確認行動は消失しないためです。

 ヒトは誰しも、死への恐怖を抱えて生きているそうです。自覚するとしないとに関わらず。だから、例えば崖から落ちそうになった時、無意識でもどこかに捕まって助かろうとする行動がとれます。体調が悪くなれば、医者に行こうと思います。その機能があるのは、健康です。けれども、大丈夫と言われても、納得できず落ち着くことができないところが病です。

ヒトは必ずいつか死ぬのですから、その根本の不安を消すことはできません。そこを抱えながら生きるしかないのです。故に、心気症の治療は、長くかかります。信頼のおける医師と二人三脚で、ゆっくりじっくり、死への不安を認め、それでも今与えられている生を大切に生きていくという気持ちになってもらうまで、自己内省をしていく必要があるのだとか。ここを乗り越えるといわば悟りを開いたような状態になるようで、人格が一歩向上するようです。くれぐれも、「気のせいよ!」なんて切り捨てないでください。よけいに、不安が強まり、確認行動が増えてしまいます…。相性の善い精神科の医師にめぐり逢えますように…。

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