挑戦者 鈴木雄大 ⑲ パキスタン遠征登山報告(2)

8/24 雨予報。朝から雨がぱらついている。
かなり長い時間雨が降り、ポーターに荷物を運んでもらっている間、ダッフルバックやウェアなどはびちょびちょに。
4250メートルの高所で、息を切らしながらテントを張り休む。
普段は太陽が厳しいが、今日は涼しかったので、4時間程度で上がってこられたのはよかった。

 8/25 昨日の疲れや濡れもあり、丸一日レスト。鼻詰まりと、多少の頭の痛さ、喉の痛みがある。
午前中の短い時間、しっかりと晴れてくれたので全ての物を乾かす。
そうこうしているとまた雨。
コックが用意してくれたパキスタンマンゴーが美味しかった。

 8/26 チャンギ2が見える地点まで空身で足を伸ばす。
しかし曇っており、全容は全く分からなかったが、何か大きな山が存在する予感はした。

 8/28 今日から高所順化と言って、高い所まで一度登ってその後ベースに戻ることで、体を慣らす作業をする。
6時頃BC(ベースキャンプ)で目を覚まし、コックの二ザールとガイドのエリアスと握手を交わし、順応へ出発。
未知の氷河なので、登攀対象を探し出す偵察の意味も大きい3泊4日となる。
BCから4~5時間ほど登り、5000メートル前後の平らな氷河で一泊、そしてトライ濃厚なチャンギ2を近くで見られれば御の字という予定であった。
3時間しないうちに、チャンギ2の全貌が明らかになってきた。
想定していたより、手掛かりになる岩の割れ目(クラック)は乏しく、岩も全体的に脆そうで、すでに登られたアメリカ隊のルートが唯一と言えるライン取りに見えた。
加えて、チャンギ2までのわずか1キロ程度ではあるが、氷河の崩壊が凄まじく、壁の魅力と氷河横断のリスクを天秤にかけた上、三人で引き返す判断をする。
2時間ほど、クレバスの迷路の真っ只中で判断を迷っていた。
行きに眺めていた平和で広大な芝生の上で今日は一泊。
自分たちのBCから迷いなく来れば、40分もしない所に今日丸一日かけた場所にたどり着けたのであった。
未踏エリアの冒険的クライミングとはこんなものだ。
果たして、クライミングの対象となる良い山を見つけられるのだろうか。
(つづく) 

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