時の過ぎ行くまゝに ⑤

風薫る五月の「生命力」  2010年5月掲載

 風薫る五月が訪れました。
新緑に囲まれた街を歩いていると、何か「生命力」の漲りを感じます。
「矢車の飛ばしてをりし日のかけら」、津村典見氏の句です。
庭先に建てられた鯉幟の先端でカラカラと音をたてながら、陽光をうけて廻る矢車。風を腹一杯にうけて大空に舞う鯉幟。
活気溢れる日本の風物詩です。

 しかし街中の高層住宅ではそうもいきません。
それでも男子誕生の初節句を祝う親心でしょうか。
マンションのベランダに小さな鯉幟が飾られているのを良く見かけます。
「鯉の滝登り」という言葉があります。
鯉が黄河の龍門という急流を渾身の力を振り絞って遡って、龍になるという中国の伝説から、登竜門という言葉が生まれ、男の子の立身出世を願う心が庶民の行事として根付いたようです。

 今は、五月五日はこどもの日として祝日ですが、五節句の一つに数えられる「端午の節句」として鯉幟を立て鎧兜を飾り粽を供え、男の子の成長を祈ったものでした。
「端午」とは五月の一番はじめの午の日のことで、それが丁度五日にあたるので五月五日になりました。
また、節句とは季節の変わり目を意味し、邪気を払うために軒下に菖蒲やよもぎをさしたので、「菖蒲の節句」とも言われるようになりました。
菖蒲が尚武と勝負と音が同じなので武具の呼び名や模様につかわれました。

「鯉」という魚はコイ科の淡水魚で、側線鱗が三十六枚あることから六六(りくりく)魚とも言われていますが、実際には急流よりはゆるやかな流れの泥底に棲息しています。
食餌は雑食性で川を回遊するときのほぞは決まっているので、一度釣り損ねた魚も怖さを忘れた一週間位後には同じポイントに必ず姿を現します。
将に「鯉(恋)の道」は一筋なのかもしれません。

 時期がずれて役に立たないことを「六日の菖蒲」「十日の菊」と言います。
五日の菖蒲の節句と九日の重陽の節句に間に合わなかったことの揶揄です。

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