私は隣の家を伺う。猫が隣の家に行って糞をしてしまい、怒鳴り込んでくることが度重なっていた。具体的に解決しないといけないと限界だと私も夫も思っていた。三段ゲージを買い、組み立て、餌を置き、親子に慣れてもらう。保護しようと思うなら親子同時でないと意味がない。餌をあげているとはいえ、何も関係などできていない。私は彼らにとっては見知らぬ他人のようなものだ。野良猫は人に慣れないのだ。今日こそ保護しようと思ったその日、餌を置いて、入ってきたのは、親子ではなく、いなくなって探し回った時に見かけた、あの野良猫だった。お前か、と思った。でも、お前じゃないんだ、とも思った。飼う数には限界がある。親子の入ったゲージを家の中に運ぶが、触ることを許してはくれない。母親の肉球はぼろぼろになっていた。家の中、ゲージで隔たった関係だったが、一室を猫親子用にして、仔猫はわりとすぐになついた。四匹のうちの二匹は一か月後に里親に引き取られた。二年。親猫が私になつくまでにかかった年月。猫が人を信じるまでに、かかった時間。それが長いのか短いのか、分からない。手を伸ばせば威嚇して引っ掻いてきた猫は、今は私の足元にすり寄ってくる。私が撫でる手をそのまま、受け入れて。後日談だが、のちにお前じゃない、と追い出した猫も、今は家にいる。(了)
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お悩み相談室 「義理チョコは無理せずに」
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