六月になると梅雨期が始まります。
梅の実の熟する頃の長雨なので、この名前がついたそうです、庭の鉢物の葉に銀色の粘性の線がついていたら、ナメクジの這った跡です。
鉢を裏返してみるとナメクジがいました。
稲畑汀氏の句に「なめくじの引きずっている所在かな」とあります。
植物にとっては生育に欠かせない恵みの雨である梅雨も、都会に住む多くの人達にはあまり歓迎されていません。
私たちの小学生の頃は、六月は衣替えの季節でした。
黒い学帽に白い日除けカバーをつけて、制服は霜降りに変わりました。
そして梅雨が終わると、待ちに待った夏休みが近づいてくるのです。
子供たちは水溜まりをつなげて小さな川をつくり、木の葉や紙の船を浮かべて洋服を泥だらけにしたり、チャンバラごっこで傘を壊したりして、母親に叱られたものでした。
また平生はおめにかからないカタツムリをあじさいの葉裏に見つけることの出来る季節でした。
つまり梅雨の楽しみ方を知っていました。
衣替えという言葉は源氏物語の「葵の巻」に、「にび色の直衣指貫、薄らかに衣更えして」とあります。
最近は見かけなくなりましたが、和服に生地に「セル」がありました。
辞書によれば、梳毛糸を主とした単衣用の着物地に用いられていた毛織物で、絹糸や綿糸などを用いた交織毛織物もあり、肌触りがよく初夏に着用とあります。
雨コートを着て爪皮のかかった足駄をはいて傘をさしてきた女性が、コートを脱ぐとその下は涼しげなセルの着物だったという風情もありました。
冷暖房完備、その上じめじめした梅雨期には除湿機能までついた居住空間に住む現代人にとっては、失われた文化なのかもしれません。
ともあれ、必ず訪れる「梅雨期」をプラス思考で楽しく過ごしたいものです。
熱いコーヒーを淹れて、ジーン・ケリーがずぶ濡れで歌い踊る「雨に唄えば」のDVDでも見ることにします。
【加藤三郎】
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